山猫島

we didn't mean to go to sea.

西口

今朝は学校まで自転車で、間に合わない一時間目にそれでも律儀に急いで向かった。その途中。学校に上る坂の下に駅の小さな改札がある。朝の時間ともあれば、そこから大勢の高校生や通勤姿が飛び出していく。けれど、もう9時もまわった時間であれば、そこまで人の波も無くバラバラとサラリーマンと大学生がいるくらいだった。ふと走りながら目が、改札前の道、ど真ん中に足を止めている男性と合う。ニコニコと手を上げながらこちらを見る男性をよくよく見れば、手にはクリップボード。何のことはない、ただのアンケートか何かであろう。授業がと一言口にして、私は再びペダルを踏み込んだ。
最近、あの改札近くで、ティッシュや冊子の配布員、またはクリップボードを手に通りかかる人に声をかけている若い女性二人組みなどを良く見かけるようになった。あのような光景は前からあったのだろうか。確かに春など、一時町全体の人口が増えるような季節には、確かにここ数年あの西口にも、あの類はいたが、ここまで恒常的にいた記憶はない。私が幼いときから現在まで、駅下の町並みはどんどん変化してきた。昔、入り浸った床屋はとおに無く、私などよりずいぶん昔からあった食堂がこのまえ空き地になった。地理的な観点からみれば、ここまでゆっくりとした変化であることさえ奇跡かもしれない。変化に疑問を持つのも、思い出にもつ保守的な心持であろう。ただ私を育てた一つの町が、せめて全てはなくならないようにと願ってしまう。