山猫島

we didn't mean to go to sea.

どうしても

電話恐怖症だ。恐怖症というと言いすぎだろうが。かかってきた電話は、そこまで怖くは無いから。しかしやはり、かけるのは怖い。知らない人に声をかけることができ、講義中などにもとっさに声を出して意思を伝えられるような、かなり良好な精神状態にあったとしても、電話をかけるのはひどく辛い。苦行といってもいい。家にかけることさえ、なかなか踏ん切りがつかないことがある。精神状態が悪化すれば、症状はさらに深刻になる。電話をかけることなど及びもつかない。かかってきた電話でさえ怖くてたまらなくなり、どうしても出られない時がある。取れたとしても、声は小さく低く震えて、言葉が言葉としてつながってくれない。中学時代の先生に、電話だと別人のようだと言われたことがある。あのころが一番ひどかったのだろう。
そういえば、高校時代の先生方に会うと必ず、明るくなった元気になったと繰り返し繰り返し告げられる。それほど暗かったのだろうか。自分では高校時代はそれなりに明るく楽しいこともあったのだが。学校というものが私にとっては電話機そのものだったのかもしれない。
私は更生したわけでも、立ち直ったわけでもない。もちろん毎日変化するし成長することもあるけれど。あのころの私も、今の私も、毎日必死で声を出して。