山猫島

we didn't mean to go to sea.

みなみのしま

屋久島から去年のフィールドワーク講座の報告書が届いた。講座は去年の夏だったから、あれからほぼ丸一年。
報告書を読んでいる内に、あの夏が、あの熱気が腹の奥で膨らんできた。熱を孕んで、体中が沸騰したような感覚。体に刻まれた一年前のあの喜びの記憶が浮上して来る。
あの時の確信。全てを探求に捧げるという快楽。それを得るために選んだはずの今、日常に引摺られ、不完全にしか燃やさずにいる。そのことに、気づかされた。殴られたように。
幸せな日々に、何となくダラダラと流されて、あの喜びを得ようと働くことをしていなかった。ブスブスと燻る火種を、少し持て余してさえいたのだ。
あの時はまさに血が沸き返るほど鮮やかだったのに。