山猫島

we didn't mean to go to sea.

怪異

ゴツゴツとした隆起を背景に浮かび上がる異形を目にし、瞬間、目線が縛り付けられた。のったりとした滑らかな黒にかすかな光沢と影が同居していた。
深夜の川沿い。逢瀬を楽しむ恋人達もさすがに疎らになるころ。別れがたそうに橋の袂でボソボソと顔つき合わして話すカップルを邪魔しないように遠く避け、再び真っ直ぐ歩き始めたところであった。川に沿って並ぶ桜の荒れた木肌を見るともなしに眺めたのだ。
探していますの文字を認識したのはすぐだったが、それでもなお薄い紙はただ静かに木肌のうねりを浮かび上がらせていた。