山猫島

we didn't mean to go to sea.

雨中

梅濡るるを眺む 車窓の水滴越しに 誰かさんのため息

整理整頓分類分別

くくる快楽から逃れられない、自分を

めまいの明暗

ふいに動いた世界がぐるぐるぐる

脱出口

アイスアップルティーなんてゆう淡い色合いのものではなく、ロシア料理屋さんで出てくるような色。あったかくて、ジャムがそこに沈んでいて、更に透明度が低下している。勿論ストローなんてものは無い。 底に沈んでしまったら、上下左右さえ曖昧になる。いつ…

惰堕

非効率かつ不経済的な選択をして、しかもそれを選んだ事によって精神的にもかなりのダメージを受けている。それでも、その選択を覆せぬのは偏に意地と恐怖心。自縄自縛とはげにこのことなり。

まだ待ってる

一面を灰白色。奥行きを消した塗りつぶし。滴ると言うより、まとめきれずにまとわり落ちて来た、ぼけぼけとした曇り空。シルエットしか見えない散乱した積み木に、白けた明るさが覆いかぶさる。 対岸から眺めやる薄ぼんやりした凹凸は、焦りよりも諦めのかつ…

曇り後

怒りとか憤りとか、昔はエネルギイに変換された。そういう感情を呼び起こした因子を、素直に否定できたのかもしれない。悔しい。負けるもんか。こっちが正しい。私が正義だ。と。 何時の頃からか、怒りや憤りといった強い負の感情は一瞬の発露の後、腹と胸の…

発熱

暑くて暑くて眼下に広がる川面に頭から飛び込みたくなる。水底に沈んで厚い水越しに眺め上げれば少しは太陽も涼しげに見えるかもしれない。 ひどく暑さに弱い子だった。夏の生まれなのになのかだからなのか知らんが、とにかく夏は苦手であった。外出するとい…

怪異

ゴツゴツとした隆起を背景に浮かび上がる異形を目にし、瞬間、目線が縛り付けられた。のったりとした滑らかな黒にかすかな光沢と影が同居していた。 深夜の川沿い。逢瀬を楽しむ恋人達もさすがに疎らになるころ。別れがたそうに橋の袂でボソボソと顔つき合わ…

偽りの涙なりせば

布団にsideの区別があるのかは怪しいが、どうも昨日は布団の良くない側から起きてしまったようだ。自業自得というほど自分に非はなく、かといって誰に責を負わせる訳にもいかない。半端な憤りが燻って、装う笑みをも歪むこと。 好き嫌いはある。何となく程度…

何も知らない顔をして

川縁の緑が日を経るごとに濃く鮮やかに、川面の揺らぎもまた明るく涼やかになってきている。日差しの中の凹凸が強い効果を生み出す季節だ。 凸凹のぼこの方こそ、実は力強いのでは無いだろうか。正義の悪癖、悪の良識。玉葱でもマリオネットでもなんでも良い…

さてさて丁か半か

赤いラインのメトロ車内。朝の一眠り実践中の大人の横で。細い手足を淡い色合いの半袖半ズボンから覗かせた勝負師がふたり。 座席は並んだカードに譲って端っこに腰を引っ掛け、手一杯に持ち札を広げて、いざ尋常に…。 今朝の暑さと良い勝負。

袖触れ合う

此処の所あらためて自分の知識について考えさせられた。チトが「どこまでが常識でどれが皆あまり知らないことなのか分からない」と言ったのは、専門分野の話だったが、広く一般に当てはまるものだと実感させられることしばしば。 隣人が経て来た歳月の蓄積は…

避雷針欠乏症

研究室の窓から稲妻が見えた。空に瞬く荒いジグザグ。 やっぱり空が広いんだと頭の中でつぶやきながら、口は「すごーい」と愚にもつかない感嘆を紡ぐ。 部屋の中から嵐の空を眺めて。

残滓

つりばし。拍動増加。視野狭窄。 ファン心理が分からない。 熱しにくく中まで火が通らない。 嘘に魅せられた性と、裁きを信じる信仰。 演じる事の罪悪感。 ガラスビンに独り 隔てられた空気。 春と聞かねば知らでありしを。聞けば急かるる 胸の思(おもい)…

梁塵秘抄

戀しとよ君戀しとよ床しとよ 逢はばや見ばや見ばや見えばや なんてあからさまな。なんて切実な。ただひたすらに人をこうる力の強さ荒々しさ。 決して洗練された美しさなぞかけらも無いのに。色々な歌が並ぶ中、鮮やかに想いが浮かび上がる。 今眼前に広がる…

昔を六つも重ねた昔

まるで飛んでいる様だと感じる。バスで首都高を走り抜けるときのことだ。高架は大体ビルの4、5階くらいの高さはある。両側に立ち並ぶビルの間をすり抜け、川面を見下ろし、近くなった空を仰ぐ。 昔は、もっともっと飛べたのかもしれない。

朝に見る夢

しくじった。 朝に約一時間のバスは貴重な睡眠補給源。毎朝、隅田川を見るか見ないかのうちに夢路につく。 なのに、鏡花め。はっと覚めれば、目的地目前。一睡もせずに夢に遊んでしまった様子。 朝の睡眠時間が奪われただけなら、許せるが、読み切って終った…

身の丈

阿吽。動く強さと動かない強さ。妹が携帯を買った。常につながっている事に恐怖を覚えた日が遠いい。感覚は所詮、相対的。すべてが大きな小さなまちとすべてが小さな大きなまち。 行ったり来たりで、目測も狂いつづける。空気に溶ける淡白い色。移動しつづけ…

じゅんれつくみあわせ

私の手は小さい方みたいだ。父の手も小さい方みたいだ。ずんぐりむっくり丸っこい手。よく似ているとよく言われる。 私の足は母方の祖母似だと父が言った。コロンと丸っこいんだって。私は、今まで何回も祖母の足を見て触っているのに、自分の足と似ているな…

蓋をし忘れる

私は両方の目じりに小さな泣きぼくろがある。気づいたのは最近。小さい頃、私はよく泣く子だった。兄と喧嘩しては泣き、自分の思うとおりにしてくれないと泣き、とにかく一日一回は泣いていた。大声を上げて、涙を沢山流して、ワーワー泣いていた。 学校に行…

終わりのつくりかた

去年は、舞台の運営だったため、兎に角忙しく張り詰めていた。その代わり、一日の密度が極端に高く、高揚した精神が強い感情を引き出した。それに引き換え今年は、仕事も出番も少なく余裕があるがゆえに弛んだのか、緩やかな幸福感にひたっていた。 去年の運…

横で観ているのが

渦中にいる自分をとらえることはたいそう難しい。決して手を出さずに、横から口だけ出している方が、よく観えているのだろう。

よりの用法

海よりも深い愛東京駅より一時間 実家のトイレの壁に、助詞一覧表が貼られていた。どうも一応受験前の妹のため、中学の国語資料集をコピーしたものらしい。そこには様々な助詞が格助詞やら終助詞やらと分類され、それぞれに例文がついていた。 格助詞「より…

防災訓練のヘルメット

初めてかぶったらぶかぶかだった。午後から雨が降り始めたので、避難訓練が中止されるかと、研究室一同期待したのだけど、結局予定時刻を五分ほど過ぎたところでサイレンが鳴った。 小雨がぱらぱらと降りかかるなか、のろのろと集合場所に向かう。その場には…

まちにながれる

ここ一二年、いわゆるポップスというものを受け入れられるようになって来た。 昔から流行というものに疎いというのもあったが、何かあの日本語の歌詞に耐えられず、友達との付き合い以外で聞こうとは思わなかった。英語など外国語だと意味わかんないから(笑…

嫌になるほど

自分の弱さ、精神的なもろさが、此所二週間であふれだしてきた。 逆をいえば、四月からこのかた、それだけ気を張って、私にしてはしっかり生きて来たということかもしれない。でも・・

みなみのしま

屋久島から去年のフィールドワーク講座の報告書が届いた。講座は去年の夏だったから、あれからほぼ丸一年。 報告書を読んでいる内に、あの夏が、あの熱気が腹の奥で膨らんできた。熱を孕んで、体中が沸騰したような感覚。体に刻まれた一年前のあの喜びの記憶…

帰るみち、戻るみち

昼間の雨に濡れた坂をおりながら、見慣れていたはずの空を眺めやる。まだらに灰色に広がる空は、思いのほかひろかった。 この空にいつかみた放電現象。教科書の写真でしか見たことのなかった光に驚いて、濡れ鼠のまま自転車をとめた。この坂の上。 遮るもの…

スウィミングスクールの帰りに

今、実家の目の前に立つマンションは私が小学二三年のころに建った。小学一年のころに、まだ空き地だったそこで、遊んだ記憶が確かに残っている。 今、きれいに整備されたせせらぎは、コンクリートの上を流れる泥水の流れであった。環境整備工事がはじまり、…